皆様よいお年を／あけましておめでとうございます

タイトルは貴方がご覧になられた時間帯にふさわしいモノをお選びください。（笑

あと三十分ほどで家を出て帰省せねばならん時間帯にまでこんなことをやっている私はどうなのだろう。
でも昨日ベッドの中でなんとなく思いついちゃったんだもの！
年またいだら忘れちゃってそうだもの！
だから今のうちに書く！


ああそうそう、コミケでお会いした皆様ありがとうございました。
挨拶もそこそこに出て来てしまいましたが。
おかげさまでリアル年賀状は仕上がりました！　サイト用年賀状は出来てもいません！
（何なら以下の小説がお年賀代わりってことでもいいですかどうですか）
掃除はもう年内中は不可能です！
そして拍手で「クリスマスに小説読めてうれしい」って言って下さったそこの貴方！　私はクリスマスに貴方が来て下さったことがうれしいです！！

「かぜひきうそつき」


喉が痛い。
身体がだるい。重い。
頭がぼーっとする。熱っぽい。

風邪の諸症状とか言われている症状のいくつかが、今まさにおれを襲っている。

「もー。薬は飲んだの？」
「……のんでない」
「飲みなさいよっ。今取ってくるから、そこでおとなしく待ってなさいよねっ」
あかねがふすまを開けると飛び込んでくる、冷たい廊下の風。背筋にぞくぞくぞくっと特大のつめたい尺取り虫が這ったような感覚。
ずび、と鼻を鳴らして、手に持った温かいおしぼりで背中をちょいとだけ拭いて、すぐに上着を羽織り直した。
それでもまだぞくぞくぞくぅと駆け抜けるつめたい尺取り虫。諦めておれは、ゆっくりとあかねが敷いてくれた布団にもぐりこむ。
布団に足先を付きいれただけでじんわりとあたたかくて、高めに布団を持ち上げ中を覗いてみたらしっかり湯たんぽまで準備されていた。
このあったかさは眠気を誘う。肩まですっぽり布団にくるまれていると、それだけでまぶたが重りでもつけられたかのように下がってくる。ちょっとだけ、あかねの匂いがするような気がしたが、そういえば今おれは鼻もつまっているんだった。

「お待たせー、って、寝るならまず薬飲みなさいよ……」
「んー」
めんどくさそうに横たえたからだを起こすと、あかねは丸まったおれの背中にそっと手を添えた。おれは今にもばたんと倒れそうな顔でもしてるんだろうか。
「はいお水」
「ん」
手渡された粉薬をのどに流し込み、続けて渡された水でそれをのどの奥へと押しやる。
「うえーにげー」
「良薬口に苦し、っていうでしょ。だから効き目抜群よきっと」
「……あかねのメシよかマシだから、いーけど」
「……こんな時にもそーいう事言える元気があるなら大丈夫ね」

怒りを含んだあかねの言葉を聞きながら、おれは再び布団の中へもぐりこんだ。
固めの枕にぽすんと頭を載っけたとこらへんで、続けてあかねの冷たい手がおれの額を覆った。
「……まだ熱いなぁ」
「……おめーの手が冷たすぎんだよ」
「冷えピタとか、いる？」
「んー……」
あかねの冷たくてやわらかですべすべの手の感触に耐えきれなくて、おれはそのまま寝返りを打ってそっぽを向いた。
「いらねえ」
冷たくて気持ちよかった感触は消え、ふたたび額にも熱が集まり始める。
「そ、か」
あかねが静かに立ち上がる。
「居間にいるし、時々様子見にくるから。何かあったら言って」
きっと柔らかな微笑みを残して、あかねは薬を載せて来たお盆を片手に、部屋を出て行こうとしている。

「……あかね！」
後ろ姿に思わず呼びかけると、あかねは振り返った。
「なあに？」
優しい微笑みを見ると、急速に頭に血が上ったようになる。

ありがとう。
ありがとう。
……ありがとな、でも大丈夫か。

「……お、おかゆとか作るんじゃねーぞ。悪化させたくねえからなっ」
明らかにムッとした顔をして、あかねはぷいっとそっぽを向いて出て行ってしまった。


のどが痛い。のどが痛い。のどが痛い。
それが風邪のせいなのか、言いたかったセリフを言えなかったからなのか。
熱に浮かされた頭は、正しく答えを導き出してくれそうになかった。